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コラム

[永久保存版] 金パラ(キンパラ)とは何か?基礎の基礎を改めて理解する

2018.03.01

 【金パラ】とは?組成成分や合金の使い方とは?

金パラ(12%金銀パラジウム合金)とは何なんだろう?

『金パラ』自体はよく目にする耳にする歯科用語です。そもそも【きんぱら】とは何か?どれが【金パラ】で、どれが違うのか。いまさら聞けないこと、詳しい定義まで知らなかったことを基礎を知ってスッキリさせましょう。金パラ製品の詳細紹介を通して、成分についてもハッキリと認識して頂けるように、詳しく説明させていただきます。

Q:【金パラ】って何?貴金属を使った歯科用の材料?

金パラ製品のイメージ画像

『金パラ(きんぱら)』とは、正式には『歯科鋳造用12%金銀パラジウム合金』の略語です。

銀を主成分とする合金であり,その銀の硫化を防止するためにパラジウムを添加されている合金です。さらには銀・パラジウムだけでは鋳造欠陥が発生しやすいため,耐食性を向上させる目的として金を添加しています。

歯の詰め物(インレー)や、かぶせ物(クラウン)によく使用される歯科で使われる保険適用金属材の一つを指します。この合金は、毒性が弱く生体安全性に優れ、耐食性もあることが主な利用の理由とされています。『パラ』『金パラ』『キンパラ』『銀パラ』『12%合金』などと俗称して呼ばれることが多くあります。

金パラはメーカーによって「第1種」「第2種」や「第1種・第2種共用」のように使用用途に違いがありますが、一般的に第1種はインレー・クラウン用、第2種はブリッジ(架工義歯)やクラスプ(金属床)用といえるでしょう。金銀パラジウム合金の主流商品には「第1種・第2種共用」も多く存在します。1種と2種の違いとしては、組成的には一種はインジウム等を加えるなど変色性を抑えているのに対し、二種は銅などの添加により粘りを出しているといったところでしょうか。

金や貴金属合金は歯科修復材として最も古くから使用されてきました。これは先述の通り、金や金合金が化学的にも生物学的にも機械的性質に優れていることに加え、特有な色彩の美しさ・輝きが尊ばれたことによるものです。歯科用貴金属合金には、金・銀・銅が主成分である金合金と、銀パラジウム・銅からなる銀パラジウム銅合金などがあります。現在では有機高分子やセラミックスのようなメタルフリー素材も使われる事がありますが、金を主成分とした貴金属合金系が口腔内の環境においてきわめて信頼性の高い修復材としてまだまだ重要な役割を果たしているのは間違いがありません。

Q:『12%金銀パラジウム合金』は、何が12%?残りの88%は?

金パラ(12%金銀パラジウム合金)の成分の比率の画像

金パラ製品は必ず、成分含有率が ①金が12% ②パラジウムが20% であること、と【JIS規格】で定められています。その他の組成成分としては、銀がおおよそ50%前後、銅が20%前後、さらにその他としてインジウム・イリジウムなどが含まれることがあります。つまり、金とパラジウムの含有率は、どのメーカーも全て同一規格となります。

メーカーごとの主な違いとしては、生成方法の差、銀・銅・その他素材の含有バランスの差、合金としての硬さ、生成時の液相析出温度・液相点の違いなどがあげられます。液相点の差は操作性の差と言えますが、合金として同一規格をこえる事はありません。保険適用となる素材は、全て商品名まで指定されています。

なお、合金の含有比率を様々変化させて検討した結果、主成分である 金を12%・パラジウムを20% 添加された合金がもっとも耐食性や機械的性質、さらに経済的に満足できる組成であり、鋳造用合金として鋳造が容易で技工操作に適したものである、と定義づけられました。その為、現在では一規格として質量を固定し、銀・銅の添加、スズ、インジウムなどを微量添加した多元組成で合金化されています。

補綴(ほてつ ※人工物で補うこと)を目的に使用される歯科用貴金属合金の種類には、金銀パラジウム合金、金合金、銀合金等があり、インレー(詰め物)・クラウン(かぶせ物)、ブリッジ(架工義歯)、金属床(入れ歯の床)など、目的に応じた用途に使用されています。口腔内で十分に機能を発揮するためには耐食性、強度・硬度といった機械的性質に加え、見た目の審美性をも求められます。

Q:金・銀・銅、そしてパラジウムとは何ですか?

金・銀・銅・パラジウムのイメージ画像

金パラの主成分について、ここでおさらいしてしまいましょう!

金 (Gold)

皆さんがご存じの『金(ゴールド)』は、特に生体親和性があり、柔らかく可鍛性があること、酸化しにくく展性と延性に富み、非常に薄くのばすことができる性質から、幅広く医療・エレクトロニクスなどの分野で利用されています。様々な性質で他の金属元素よりも優れているといえます。鋳造用金合金の主成分としてパラジウム、銀、銅、白金等とも合金化し易く、特に銅を伴って時効硬化性を発揮します。

銀 (Silver)

銀(Silver)』は、金・パラジウムによく溶け込み、合金の融点を下げる性質があります。銀は金に次いで展性と延性に優れ、耐食性も非常に良い性質を持ち合わせています。ただ、硫化しやすいこと、鋳造性は良とは言えない為に、金・パラジウム・銅・インジウム等の添加によって性質を補っています。金へ銀の添加を行っても強度・機械的性質の変化は少ないため、金銀パラジウム合金では、50%前後含有されているのが一般的です。

銅 (Bronze)

『銅』は、金合金の融点を下げ、機械的性質・強度を著しく向上させ、時効硬化特性を有します。金銀パラジウム合金では、パラジウムに良く溶け込む性質があるため、熱処理硬化性や融点を下げ流動性を向上させるために、約10~20%の範囲で添加されています。

パラジウム (Palladium)

palladium(パラジウム)』とは、原子番号46の元素、白金族元素の一つで、銀白色の金属単体です。元素記号は Pd となります。貴金属にも分類される希少金属(レアメタル)の1つとして広く認知されています。名前の由来としては、1803年にイギリスの化学者、物理学者ウイリアム・ウォラストン (W. H. Wollaston) によって発見され、この前年に発見された小惑星パラス (pallas) にちなんで名づけられました。

貴金属として、高品質プラチナやホワイトゴールドの割り金として利用されているほか、パラジウムメインの合金ジュエリーが、プラチナやホワイトゴールドに替わって生産されています。

パラジウムの世界産出量のうちロシアと南アフリカ共和国でおおよそ80%、カナダ・アメリカで10%を占めており、経済情勢や政治情勢の変化で価格相場が非常に不安定なレアメタルなのがパラジウムの特徴です。パラジウム先物取引では2017年、主要商品の中で最大の値上がりが示されており、2012年以降、供給不足が拡大を続け、確実に生産量が消費量を下回っていると指摘されています。パラジウムは主にはプラチナとニッケルを採掘する際の副産物であるため、不足への対応が難しいとの見方も示されているようです。

主な値動き変動要因として、最大の供給国であるロシアの売却動向が相場を大きく左右しています。特にここ数年、年末頃に日本との長期輸出契約の締結を巡る紛糾が頻繁に起こることも、パラジウム相場の波乱要因としてあげられています。また、パラジウムの需給の6割を占め、経済成長とも密接な関係を持つ自動車・コンピューター産業の工業景気に価格は左右され易く、金・白金・銀と同様に為替の動きも大きく影響します。パラジウム需要国としては、日本と北米が6割以上と高く、価格の安定は経済においてとても重要な課題となっているといえるでしょう。

パラジウムは白金の代替性質を持っており、密度が12.16(g/cm3)と小さいため、経済性が良く合金の軽量化に役立ちます。白金の価格変動によっては、触媒に用いられる場合には、白金の使用量を減らし、パラジウムで割合調整を行われることがあります。結果、これがパラジウム価格の上昇要因となり、今度は逆にパラジウムの高騰を招くと、白金に回帰するという傾向もあるようです。

Q:金・銀・銅・パラジウム以外も金パラに入っている?

歯科金属のイメージ

金パラに、上記4つ以外に含まれている金属について見ていきましょう。

  • インジウムには、融点を下げ鋳造性を向上させる性質があるため、パラジウムに次いで硫化を防ぐ効果的な元素といえます。
  • イリジウムには、合金の結晶粒を微細化させる作用があり、伸びの機械的性質が向上します。特に、イリジウムの添加は0.01%以下でも十分微細効果を得る事が出来、多量添加の必要性はないと言えます。 また、融点が高く、金への固溶域がかなり小さいため、微量の添加に制限されます。
  • ガリウム・ゲルマニウムはメタルボンド用貴金属合金として添加されます。融点を下げ流動性を向上させる目的で主に添加されます。 ゲルマニウムが約1%未満、ガリウムは約1~10%と添加量に差があります。

Q:金、銀、銅も、相場によって価格変動があるのですか?

金、銀、銅の相場の価格変動のイメージ画像

はい、その通りです。

金の相場を例にご説明します。パリ、ロンドン、ニューヨーク、シドニー、東京、香港、シンガポール、チューリッヒなど、世界で金の取引量の多い取引所のある都市では、日々その時々の取引状況で相場が決められています。各都市での取引は時差によって同時間に行われることはないため、24時間、世界のどこかの都市で常に取引されていることになります。その中でも、国際的に金価格の指標とされているのがロンドン市場価格。大手貴金属商数社『フィキシングメンバー』による価格決定が毎日午前10時30分と午後3時の2回に行われ、その価格を基準に世界で取引が行われています。(これを『ロンドン・フィキシング』といいます。)

金価格は1トロイオンス(31.1035グラム)あたりの米ドル建で取引され、各国流通通貨に換算されます。その為、流通通貨と米ドルとの為替相場、それにドル建の金価格変動の両方の影響を受けて金価格が決定されるという仕組みになっています。

こういったように、金パラ合金含まれる貴金属にも、価格相場というものがあります。市場価値・為替の変動を受け相場が日々変わってきますので、相場価格の確認は非常に重要と言う事です。

まとめ

  • 金パラとは、JISで定められた主成分 金12% パラジウム20% を含有する合金で、生体安全性・耐食性に優れた歯科用貴金属材料『12%金銀パラジウム合金』の略。
  • 添加成分であるパラジウムは、価格変動性が強いが、工業触媒・歯科材として、白金の代替性質を持つレアメタルとして利用されている。近年、需要を上回る供給不足をうけ、価格高騰が見受けられている。
  • 金、銀、銅、パラジウム以外にも、インジウム、イリジウム、ガリウム、ゲルマニウムといった金属も含まれている。
  • 金パラに含まれる金属は希少貴金属であるため、価格相場により売買価格が大きく変動する。

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